美術印刷

美術印刷というと、実はあいまいな定義で、色調にこだわった高級な印刷、という区分が基本になっているようです。当社は、社名に『美術印刷』は入れておりませんが、行っている内容は美術印刷と言えるものが多くあります。本当の美術品のカタログや図録などもありますし、印刷や装丁にも凝った写真集など、多くの実績があります。ここでは、その中でも美術印刷の代表格・美術品の印刷をご紹介いたします。写真集についてはこちらへ→

色は合わせたいけど、持ち出せない美術品

美術品のカタログは、色の作りこみの点ではかなり気を使いますから、やはり『美術印刷』といって差し支えないでしょう。当社で多く扱うアパレル様のカタログなども、手のかけ方からすると『美術印刷』といっていいものも多いですが、やはり大変なのは美術品のカタログでしょうか。
アパレル様のカタログは、色見本として現物や布地のサンプルをお借りすることも多いのですが、美術品のカタログの場合はあいにく現物をお借りするわけにはいきません。ものによっては値段が何千万円、何億円とするものもありますし、とても重く大きなものもあります。ゆえに色校正を現地へ持ち込み、現物と見比べ、方向性を赤字として記載して、現場に指示をして色修正を行っていかねばならないのです。
現地で確認するときの懸念点として、光源(照明)の問題があります。たいてい、雰囲気のある黄色っぽい照明を使われていることが多いようですが、そうすると実際の色よりも絵や校正が黄色がかって見えることになります。同じ程度で色が転んでくれるなら問題ないのかもしれませんが、なぜか紙と美術品を比べると光源による色の転び方が違うこともあるのです。その対策のために、当社にある標準光源のライトを持ち込むこともあります。

印刷再現が難しい美術品の世界

通常の印刷ではインキはスミ(K・クロ)、藍(C・シアン)、紅(M・マゼンタ)、黄(Y・イエロー)の4種類のみの組み合わせで、しかも凸凹させず平坦に表現するので、再現できる色の範囲は物理的に圧倒的に少ないのです。特に、CMYの中間の色である紫、オレンジ、グリーンの色の鮮やかなところは再現できません。絵には様々な色、様々な絵の具が使われており、その一つ一つが集合体となって一つの作品を形成しています。金箔地や銀箔地の上に描かれているものも多いですが、金銀は人間の目が動くことによる光沢の変化で金属感を感じるのが本当のところですので、完全再現は無理なのです。現代アートになると蛍光色を使用する作家もいらっしゃいますが、印刷では絵の具の濃度には及ばない蛍光インキがあるくらいで、もちろん通常インキでは表現できません。こういった制限のある中で、どうやって本来の印象に近づけていくか、これが実は我々の腕の見せ所なのです。

色ばかりでなく雰囲気をも表現

まず、プロセス4色(CMYK)で作りこんでいくことを基本とします。細かい色については、現物と見比べて、営業やプリンティングディレクターが現場に細かい修正指示をしながら合わせていきます。単純に色を合わせるのと同時に、作品の印象や世界観も踏まえながら、全体の雰囲気も表現していくことは重要です。ある作家が力強い線とボリューム感が特徴ならば、そこを表現するように努めますし、別の作家は全体としての柔らかい雰囲気が特徴なら、そこをとらえるような修正を行います。
絵画などは人間の感性に訴えかけるものですから、先方のご担当者様の感じるところも様々なので、その絵から感じる印象が一日経つと変化することすらあります。色や画像の調整を、赤字という文字ベースだけで行うのは、現物を見ずに伝言ゲームだけで個別の色を合わせていくものですから、なかなか難しいものがあります。この辺りは、経験がものをいう分野です。

再現できない色を、どうやって再現するか

問題は、プロセス4色で物理的に表現しきれないものです。蛍光色を印象的に使っている作品には蛍光色を入れて5色6色などで作ることもありますが、印刷インキで存在する蛍光色も限られますし、濃度感は足りないことが多いので、CMYKから色を補うこともあります。当然、撮影した画像データは、元はRGBで蛍光色としての分解はできていないので、製版作業として色を指定しながら蛍光色版の作成を行わねばなりません。どの程度どの色を入れるかなど、実際に印刷してみないとわからないので、色校正は確実に必要となります。

金が使われている絵の表現はゴールドインキ?

金銀が絡むものについては、光沢感を色として表現することで、ある程度の豪華な印象などはプロセス4色のみでも演出することはできます。金紙を写真にとると、光って見えるところと光らないところの差ができて、それにより人間は『金』っぽいと認識しますが、その応用で印刷でも金のように見せることは可能です。ただ、それ以上の特別感などを求める場合は難しいでしょう。
例えばゴールド(金)インキを使うという手がありますが、ゴールドのインキは絵画に使われるような箔系の光沢感までは持ちません。さらにゴールドのインキをプロセス4色の前に印刷するか、プロセス4色の上に印刷するかで効果が変わります。単純に絵柄をゴールドインキで印刷した上に乗せただけでは、色のバランスが全く崩れます。また、プロセス4色を印刷した上からゴールドを印刷すると、ゴールドのインキは不透明なのでゴールドによって絵柄自体が隠れてしまいます。また、様々な処理をしてゴールドを先に印刷すると決めても、1回でゴールド+プロセス4色を印刷するか、ゴールドとプロセス4色を2回に分けて印刷するかで、大きく見え方は変わります。ゴールドが乾燥していない状態で別のインキを乗せるか、乾燥してからインキを乗せるかで、乗り方は全く変わってしまうのです。また場合によっては、シルバーインキを使う方法も考えられます。
これは一例ですが、こういった通常の印刷の手法から外れるやり方もいろいろとあり、特に凝ったものを作る際には必要になることも多いのです。

装丁がアーティスティックなことも

いい印刷をすれば、装丁(製本)にも凝りたくなるものです。製本方法も様々にありますが、やはり綺麗に仕上げるには、様々な経験とノウハウが必要です。製本の仕様ももちろんですが、箔押しで凝ってみたり、シルクスクリーンで凝ってみたりと、さまざまな可能性があります。美術印刷と言えるものを仕上げていくためには、今まで培ってきた知識があって初めて実現するものです。