写真集印刷

美術印刷といわれるジャンルの中でも、写真集は代表的なものともいえるでしょう。印刷することで、印画紙よりも安価に大量に、さらに本としての装丁も含めてすばらしい作品に仕上げて、幅広く配布することができるので、写真家様にはとても重要なものとなります。もちろん、それを求めるお客様にとっても、自分の好きな写真家や女優などの本が出来上がるということはうれしいことであり、わくわくするものです。最近だと、当社ではクラウドファンディングでファンの方から広く資金を募り、それで写真集化を実現した、というケースもがありました。当然、様々な方から非常に期待されるので、実生産を受け持つ印刷屋にとっては、大いにやりがいを感じながらも気の抜けない仕事となります。

初めの段階での打ち合わせは大切

自分の作品を表現するものですから、写真家様は強いこだわりを持たれています。一方で印刷屋としてはご希望の理想の状態は踏まえつつ、印刷自体の特性と、強み・弱みをつかんで設計していく必要があります。物理的に印刷の再現性よりも印画紙の再現性のほうが色域も階調も広いので、印刷になると品質的には落ちる方向にならざるを得ないのです。それを、どのように感じさせずに、いい形で仕上げるかが、印刷の腕の見せ所です。
写真家様のご希望の方向性などを確認させていただくため、まずは写真だけを単体の状態で校正(バラ校)を刷ることもあります。これは、全体として写真の処理の方向が正しいか、イメージとして良いかどうかをご確認いただくためです。場合によっては、複数の処理パターンを作って、選んでいただくようなことも行います。写真家さんも当然製版の専門家ではないので、こういった初めの段階で様々な可能性をご提示しての確認作業は重要なステップです。

紙のチョイスも重要

紙によっても大きく出来栄えが違ってきます。再現性を求めるなら、コート紙(A2)よりはアート紙(A1)、アート紙よりはスーパーアート紙(A0)が適しています。この違いは、紙の上にはインキののりを良くするための塗工を施してあるのですが、その塗工の量によっての違いです。数字が小さくなるほど、塗工の量が多くなるのですが、紙の場合では塗工が多いほうが、その上に乗るインキが沈まずきれいに再現できるのです。そのため、再現性を重視した写真集には、そういった紙がよくつかわれる傾向があります。
紙の違いは印刷にとっては実は大きく、新聞のような『ざら紙』とアート紙を比べると、まったく再現性が違います。紙の質が悪いと、細かい階調が再現できず、ディテールがつぶれて見えなくなります。そのため、紙によって製版処理は変える必要がありまして、ざら紙に印刷する前提の写真を間違ってアート紙などに刷ると、非常にコントラストの効いた写真になっているはずです。その場合、なんてひどい写真処理・・・という印象を受けますが、実は紙の問題であることも多いのです。紙の風合いも含めた世界観を訴求したいカタログなどは、再現性よりも雰囲気を重視して紙を決めることもあり、それでもディテールは出したいというご要望には、そういった特殊な写真修正でお応えします。

職人技のレタッチ作業

次に写真集で出てきがちなのは、写真のレタッチ作業。写真家さんのほうで行われることもありますが、印刷現場のほうで行うこともあります。女優さんの写真集などとなると、ファンの方には申し訳ないのですが、さまざまな修正を行うことも多いです。人によって程度は大きく違いますが、写り込んだ電線を消したりだとかはもちろん、しわ、シミの除去から始まって、はねた髪の毛の除去、脚を細く、そのほか様々・・・といった内容もよくあります。DTPが普及する前は、高価なシステムを使ってやらねばいけないようなことでしたが、最近ではマック上の処理で対応できるようになりました。もちろん優劣は大きくあり、技術がものをいうところではありますから、どこの会社でも同じようにできるということではありません。

モノクロの場合は、ダブルトーンも有効な手段

また、アーティスティックなモノクロ写真集ですと、黒インキ1色だけではボリューム感が不足するので、ダブルトーンという手法を使うこともあります。これは、スミ版以外に別版を作り、グレーなどで補色を入れることでボリュームアップや階調の拡大を狙うものです。うまくやると迫力のあるすばらしい仕上がりになるものですが、製版での版の作り方や印刷での対応など、通常の印刷では出てこないような要素になりますので、経験値が重要になってきます。スミ(黒)インキも、濃度のある特別なものをご用意したほうがいいでしょうか。ここまでくると、ネット通販の印刷とは全く別物といっていいようなレベルの話となります。

重要な役割、プリンティングディレクター

ここまでの部分は、通常の営業のほかに、プリンティングディレクター(PD)が携わって行うことが多いです。PDは技術的なバックボーンを踏まえながら、同時に写真家さんのイメージを共有しながら、製造設計、品質設計をしていきます。誠晃印刷の営業は、常日頃から現場に出入りしていますから、技術的なバックボーンは理解をしていますし、他社ならばPDの肩書がついているようなレベルの人間もおります。しかし現在の誠晃印刷のプリンティングディレクターは、もとは製版の技術者で、いまでもレタッチなどもおこなっている人間ですから、実戦経験が大変豊富なのです。

都心にある現場だからこその印刷立ち合い

そして、そうやって作りあげた版で、印刷に持ち込むわけですが、営業-製版-印刷のいずれの拠点も近場ですから、お得意先様がおらずとも、プリンティングディレクターと営業が印刷機のところで印刷立ち合いをおこないます。郊外の工場で片道移動に2時間もかかるとなれば、なかなかそういうわけにもいきませんが、当社では徒歩3分ほどなので、日常的に実現できるのです。もちろん、印刷機オペレータも経験豊富なうえ、当社ではそういった厳しい仕事を常日頃から多くこなしておりますので、製品の合格ラインは高くなっています。濃度管理も重要ですが、微妙な部分、特に写真集では重要になる顔色などは、微妙な条件の違いなどでブレが出てくる恐れもあります。すると濃度だけでは信頼度が落ちますので、濃度チェックはしつつも校了紙との照合を旨としております。
もちろん、写真家様ご本人の立ち合いなども大歓迎です。最後に決めるのは本刷りですので、そこのタイミングであと一押しを見ていただくのは、こちらとしても安心ではありますし、よりお好みの方向に寄せることもできます。PDや営業も、ここまでくると方向性は理解しているのですが、そんなわけで立ち合いは大歓迎です。

最後の重要な工程、製本

印刷がきれいに刷れても、製本工程があります。上製本でしょうか、並製本でしょうか。上製本の場合、表紙のクロスはどうしますか、箱はどうしますか、丸背にしますか角背にしますか、見返しは?花布は?・・・などなど。もちろん、誠晃印刷の営業がきちんと説明し、束見本など作りながら、製本の仕様を一緒に定めていきます。このあたりの設計は版面設計(印刷するための版を作る際におこなう、絵柄の配置などの細かい設計)を行う際までにはほぼ済んでいるはずですので、その設計に従って製本工程を進めていきます。ここは、無理に急がずに、紙の落ち着きなどを待ちながら、きちんとやっていくほうがきれいな本が仕上がります。糊なども使いますので、その水分によっての反りが出たりする可能性もあるのです。出来上がりを早く見たいのはやまやまですが、焦らずに、着実に行うことが重要です。