【高精細印刷は、今どうなっているのか?】

オフセット印刷の技術の一つとして、「高精細印刷」というのがあります。通常、日本ですと175線(網点のラインが、1インチに175列ある細かさ)を標準とされていますが、これをもっと細かいもので印刷をしようという技術です。テレビで言うところの4Kだとかいうところと同じで、網点が細かくなればディテールの表現がより可能となり、鮮明に表現できるものです。これをアピールされる会社さんはネット上では見かけますが、実際のところはどうでしょうか?

おそらく2000年前後くらいに、高品質を目指すオフセット印刷の業界内で、高精細印刷へのチャレンジが流行った時がありました。誠晃印刷でも、800線くらいまで試していたようですが、限界に挑戦する感覚だったようです。現在は版はCTPですので、(細かい話はとりあえず抜きにして)簡単に作成することができます。しかし、そのあとの印刷工程で、ドットゲインというオフセット印刷の本質的な問題が出てきます。

ドットゲインとは、版→ブランケット→紙とインキが転写される際に、微妙に網点が太る現象のことを言います。ドットゲインの影響は網点の周囲が一番長くなる50%の網点の時に最大化し、最小点最大点に行くにしたがって少なくなります。そのため、刷版工程では、この現象を打ち消すような補正をかけますが、枚葉機で中間を3~6%凹ますような補正を行っています(ドットゲインカーブ)。
網点が倍の細かさになったらどうでしょうか?細かく密度の高い網点で、同じだけドットゲインの影響を受けることになるので、全体の影響はより強く出ます。過去に1000線のテスト刷りを見たことがありますが、中間調以降はほぼつぶれていました。

仮にドットゲインを細かく管理するとなると、インキの濃度範囲も厳密となり、合わせこむための濃度調整も難しくなります。自由度が狭まった結果、希望に沿った印刷物を刷ることが難しいという本末転倒の話になります。また、それ以外でも紙をはじめとして印刷には外的な変動要素が多くあり、ある程度の冗長性は現実的に必要なのです。
そんな状況ですので、紙などは条件の良いものにする前提で、現実的に生産する妥当なところは300線くらいまでではないでしょうか。誠晃印刷では、一部のものを除いて200線を標準の線数としてご提供しております。

網点の基本 →「印刷のAMとかFMって、なんですか?」

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