【オフセット印刷の蛍光インキ:知っておきたい特性と注意点】
オフセット印刷でオレンジやピンクなどの蛍光インキは、ポスターや雑誌の表紙など、インパクトを与えたい場合によく使われます。皆さんも、印刷の特色という意味では、金銀などと並んでよく目にするものでしょう。しかし、実は結構厄介な要素もあるインキなのです。
DICなどの色チップでも蛍光色が存在していますが、この色チップがまずくせものです。それなりに知られた話ではありますが、蛍光インキはその顔料の性質上、濃度が薄くしか出ず、普通の色チップはダブル(2回)刷りをしています。したがって、知らずに普通の特色と同じつもりで色チップを使って色指定をすると、印刷現場では特色2色計算の段取りとなり、しかも悪いことに、蛍光インキの顔料は大変に高価で、2回刷りにした時点でインキの使用量も倍になりますから、コストに跳ね返ってきます。経験の浅いデザイナーさんなどだとハマりがちで、発注者側としては思わぬコスト発生となりかねませんが、印刷会社のほうも実際に手間と原価がかかっていますから、難しい調整になります。
また、蛍光インキは補色として使うことも多いです。最近ではコミックスのカバーのイラストの肌色に透明感を加えるために蛍光ピンクを少し加えるといったようなものです。薄く入れる分には大して気にはなりませんが、蛍光インキはプロセスインキとは違って半透明という特性があり、絵画の再現やネオンサインの表現などで蛍光色をがっつり濃度を出したい場合などは、注意が必要となります。通常は最後に蛍光色を印刷する形で設計をしますが、普通のプロセスカラーのように黒の上に載せてしまうと、半透明ゆえ暗部の締まりがなくなる現象が発生するため、スミ版とも抜き合わせが基本となります。下地に色を入れる場合も、蛍光色をあっさり印刷するときと、べったりと印刷するときでは、下地の隠れ方に差異が生じて色自体が違って見えてきてしまうため、その濃度の管理が必要となります。
高演色印刷の応用編で蛍光インキを使うこともありますが、カレイドやブロードなどの高演色インキと比較してもうまく使うと効果は高い半面、画像データの最適化方法や、前記の蛍光インキと通常インキの透明度の違いによる再現の違いなどさまざまな問題も発生しがちなので、回避のためには製版段階からの技術的な設計が必要となります。そして、インクジェットプルーフの色域を超える蛍光インキのシュミレーションは難しいので、どうしても本機校正を取らないとわからない、という要素が残るので、複雑なものについては色調の異なるいくつかのパターンを作って校正刷りを行うのがよいでしょう。
蛍光インキのポテンシャルを最大限に引き出すには、印刷会社の確かな経験がものをいう世界なのです。




