【網点とモアレは、切っても切れない危ない関係】
印刷物をルーペで覗いたことがありますか?細かいドットが整然と並んでいるのが見えますが、これが「網点(あみてん)」です。カラー印刷ではCMYKの4色を掛け合わせて色を表現しますが、それぞれの濃さを変化させて絵を作っているのではなく、大小の網点で濃淡を表現しています。江戸時代の浮世絵はそれぞれのベタ刷りの版をいくつも使って何度も刷り重ねて絵を作るのに対して、網点はそれ自体でグラデーションや中間色を生み出すことができるので、4色で複雑で繊細なフルカラーの写真の再現をも可能としました。
優れモノの網点ですが、この網点同士が干渉して、ないはずの縞模様(モアレ)が発生する現象があります。もともと網点の並びには角度があり、理論的には網点同士で干渉が発生しないのは30°刻みです。しかし、使うべき色は4色なので見えやすいCMKを30°刻みとし、人間の目には目立ちにくいYを仕方なく15°刻みに配置することにしました。結果、一般的にはC=15°、M=75°、Y=0°、K=45°といった角度で設定していますので、気にはならないですが黄色がらみでは常にモアレが発生しています。網点とモアレは切っても切れない関係なのです。
これで解決かと思いきや、問題としてまだ発生することがあります。一つは、印刷する絵柄に同じような周期や角度の模様(例:粗めの布地の服や細い縞の布地の写真)がある場合には、印刷側の網点と画像内のパターンが干渉し、モアレが出てしまうことがあります。この場合、まずは画像処理で該当する画像を微妙にぼかしたりしますが、本来表現したい生地のパターンや風合いを消してしまうようなこともあり得ます。また、通常175線(1インチに175本の網点の流れが存在する)の細かさを使うところを、230線など高精細にすると干渉が消えることもあります。もしくは、フェアドットといった網点の角度のないスクリーンを採用する、モアレの原因となっている色を他の色(黄色以外)の角度と入れ替える、といったこともあり得ます。いずれも現実的に考えられる手段ですが、どれも反面のデメリットや対策として使えない場合もあるので、検討が必要です。
網点の干渉の問題はほかにもあります。紙伸びなどで印刷の見当がうまく入らないと、微妙にずれた網点同士がバラの花のような同心円状の規則的なパターン(ロゼッタ状の模様)を形成して見えることがあります。これをロゼッタモアレといい、別の干渉パターンといえるでしょう。また、製作上細い罫を薄い色でうっかり指定してしまうと、網点のパターンに罫線がはまり込んでしまって、点線に見えてしまう現象もあります。これもモアレの一種といえますが、デザイナーさんは薄い細い罫をイメージしつつ、画面ではその通りに表示されますので、うっかり気づかないと大変です。
線数って? 細かいほど良い? →「高精細印刷は、今どうなっているのか?」




