【オフセット印刷の見当と濃度って何?】
オフセット印刷は、商業印刷の現場で最も広く利用されている方式です。その強みは、高精細で安定した品質を大量に再現できる点にあります。しかしその品質を確保するためには、適切な管理が欠かせません。よく出てくるのが「見当(けんとう)」と「インキ濃度」です。具体的にはどういったことなのでしょうか?
1.見当(けんとう)~印刷のインキを決まった位置に置けているか?
オフセット印刷は、CMYKの4色(あるいは特色を含む複数色)を順番に重ねて色を再現します。このとき版がずれると(見当ずれといいます)、最悪文字が二重に見えたり、細い線がぼやけたり、色が違って見えたり、モアレが目立ったりします。インキが決まった位置に置けていない状態ですね。
見当合わせを行うためには、印刷機のオペレーターがルーペで印刷物の端に配置された「トンボ」を確認しながら微調整し、各色版が正確に重なるように調整していきます。しかし、紙に圧力をかけてインキを乗せていくオフセット印刷ですから、当然印刷を1色刷るごとに紙が伸びもします。そうなると、本質的に印刷面すべての場所で見当を合わせるのは不可能ともなり、その中でどのように調整してトータルの印刷の品質を保っていくかはオペレーターの腕と経験によってくるのです。
2.濃度管理 ― インキ量を数値でコントロールする
印刷における「濃度」とは、インキの濃さを数値で表したものです。例えば同じ赤でも、インキの濃度が薄ければ淡く、濃ければ濃く見えます。インキを多く出せば、その分濃度は上がりますので、オペレーターは「濃度計」と呼ばれる専用機器を使って刷本を測定し、基準値に合うように調整します。
適正な濃度管理が重要なのは、安定した印刷を行うことに加え、トラブルの予防でもあります。インキ濃度が濃すぎると色が濃くなり細部がつぶれ気味になるうえ、乾燥不良やインキ乳化といった印刷トラブルにもつながります。濃度が不足すると、階調が少なくなり平坦な迫力のない印刷物になってしまいます。濃度が適切ならばいい印刷物といえるわけではないですが、品質の良い印刷物を作るにあたっては外せないポイントです。
3.品質管理を支える仕組み
見当合わせ・濃度管理は基本ですが、そこを管理するだけで本当にいい印刷物ができるわけではありません。最近だと、検討合わせ・濃度管理を自動で行ってくれる印刷機もあり、校正やプルーフも取らないような印刷物ならそれだけで生産しているところもたくさんあります。しかし、どちらも絶対ではないために、特に品質を求められる印刷物においては、これらをきちんと管理したうえで、さらにオペレーターの経験と技術に依存する部分がまだまだ大きいのです。印刷はどこまで行ってもアナログの問題が付きまとっているのです。
品質管理+αを叶える印刷立会 →「印刷立会はなぜ有効なのか?」




