【印刷現場でよく使われる専門用語解説】

印刷業界は、独自の専門用語が多く飛び交う世界です。現場でのやり取りはスピードが求められるため、一般的な言い回しではなく、短縮された言葉や慣用的な表現が数多く用いられます。デザイナーや制作担当者が印刷会社とやり取りをする際、この専門用語を理解していないと意思疎通に支障をきたし、思わぬトラブルにつながることもあります。ここでは、オフセット印刷を中心に、現場でよく使われる用語を解説しながら、その背景や注意点を整理していきます。

刷版関連の用語
  ・版(Plate)
印刷の元になるアルミ版。データから直接出力されるCTP(Computer To Plate)が主流です。現場では単に「版」と呼ばれます。
  ・印刷立ち会い
実際に印刷を行い、仕上がりを確認するプロセス。重要な案件ではデザイナーやクライアントが立ち会うこともあります。
  ・見当
版の位置合わせを指します。CMYKの4色がズレなく重なることで正しい色表現が得られるため、印刷の品質管理における重要な要素です。

色に関する用語
  ・色校正(プルーフ)
本印刷に入る前に、仕上がりをシミュレーションするもの。簡易校正(デジタルプルーフ)と本機校正(実機での刷り出し)があります。
  ・刷り出し
印刷機で最初に出てくる試し刷り。色や濃度、見当の状態を確認し、問題がなければ本刷りに入ります。
  ・濃度(Density)
インキの乗り具合を数値で管理する基準。濃度計を使い、色ムラや薄い印刷を防止します。

紙に関する用語
  ・斤量(きんりょう)
紙の厚さを表す単位。四六判(788×1091mm)で1,000枚あたりの重さで表します。例えば「コート紙135kg」といえば、四六判1,000枚で135kgの重さがある紙を意味します。
  ・流れ目
紙の繊維方向。折りや製本の強度に関わる重要な要素です。流れ目を無視すると折り割れや仕上がりの歪みにつながります。
  ・ヤレ紙
印刷調整に使われる損紙。色や見当を安定させるために必要ですが、コストにも影響するため事前の見積りに含まれます。

印刷機や作業関連の用語
  ・給紙・排紙
印刷機に紙を送ることを「給紙」、印刷後に紙を積み上げることを「排紙」と呼びます。紙の搬送が安定しないと印刷事故につながるため、オペレーターは常にチェックします。
  ・刷り出し
印刷完了後に保存しておく見本・記録用の刷り物。トラブル時の検証や再版時の色合わせに活用されます。
  ・ヤレ
ヤレ紙と同様に、印刷工程で必然的に発生する廃棄紙全般を指すこともあります。

トラブル関連の用語
  ・裏移り
印刷面のインキが乾ききらず、次の紙に付着する現象。インキ量や乾燥不足が原因です。
  ・ピンホール
印刷面に小さな白い点が出る不良。紙粉や異物が原因でインキがうまく転写されないと発生します。
  ・カブリ
印刷全体が白っぽくなる現象。湿し水とインキのバランスが崩れたときに起こります。

用語理解のメリット
これらの用語を知っておくことで、印刷会社との打ち合わせがスムーズになり、トラブル防止にも直結します。例えば「ヤレ紙はどのくらい出ますか?」と聞けば見積もりの精度が上がりますし、「見当がズレているのでは?」と確認すれば不良を早期に発見できます。逆に用語を知らないと、問題点を的確に伝えられず、仕上がりに影響を与える恐れもあります。
印刷は「紙」「インキ」「版」「機械」という要素の組み合わせで成り立つ工業製品です。専門用語はそれぞれの工程に直結しており、その理解はクオリティと効率の両立に欠かせません。デザイナーや制作担当者も、最低限の用語を押さえておくことで、より高品質な成果物を安定して提供できるようになるのです。

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