【紙選びと製本設計 ― 素材と構造の両面から考える最適な製本設計】
製本は、単純に中身の情報伝達ばかりでなく、その本自体が様々な印象を与えます。特に上製本のように凝った本の用紙選びは、印刷再現性はもちろんですが、その紙の持つ風合いや素材感、重量感、開きやすさといった要素も加味すべきです。文字中心の本なら、白色度がさほど高くないほうが文字を読みやすく、薄めでしなやかな紙のほうがページを繰りやすいです。判型も、文字中心で手に取って読んでもらうなら、あまり大きいと持ち運びづらいでしょうし、本自体が重すぎると疲れてしまいます。一方ビジュアル中心の本なら、白色度が比較的高く発色のよい紙のほうが絵が映えてよいのかもしれません。写真集などだと、じっくりと眺めてもらいたいところなので大判のほうが迫力が出ますし、紙もしっかりしたほうが良いでしょう。しかし、これらも必ずしも絶対というわけではなく、企画意図として異質感を訴求するという趣旨で逆を攻めることもあります。よく考えられた本であればあるほど、そこには意味が含まれており、それを具現化できるのが製本の奥深いところです。
まず、基本のところで紙目(流れ目)があります。落ち着いた本を作るためには、紙目を背に沿う方向でそろえるのが基本となります。逆目で作ると、紙が反ろうとする方向が変わり、ページをめくりづらくなったり、紙が浮いたりすることが起こりえます。紙目は、紙加工の世界では必ず気を付けるべきところであります。
一般的には、小さい本は薄めのしなやかな紙、大きい本には比較的厚めの紙、という関係式はあります。文庫本で本文が厚めのコート紙だすると、めくりづらく読みづらいです。大判写真集などで本文が文庫本並にペラペラだと、ちょっと頼りない本になるでしょう。最近よく使われる微塗工ラフ紙は、厚みのわりにしなやかで軽いので、その特性を生かした製本設計も見受けられます。
製本の手法も大きく影響を与えます。上製本で、仮にどうしても硬く厚い紙を使いたいとなったとき、本文の接着面が背と密着するタイトバックで作ったりしてしまうと、本当に開きづらくなるでしょう。一方本文の接着面が背とは離れて動けるフォローバックなら、自由度が高くなるため、紙が硬くとも開きづらさの面は解消できるかもしれません。
こういったきれいに開きたい、というニーズはよく言われますが、前述のフォローバックのほか、PUR製本(表紙にも配慮が必要)やコデックス装やスケルトン装、そこからのドイツ装やスイス装、広開本(並製のフォローバックのような作り方)、場合によっては絵本のような合紙製本なども可能性として浮上してきます。どれも長所短所と特徴、ポイントがありますから、製本工程にデザイン趣旨と希望を伝えながら、まずは束見本(白ダミー)を作ってもらうことが必要です。それ以外でも、製本には様々な意匠を盛り込むことができるので、その狙いの趣旨から様々な工夫を積み重ねていくことで、オンリーワンの本を作ることが可能です。
製本後の形状、開きやすさ、触感、厚み、光沢など、紙がもつ性質によって本の佇まいは大きく変わります。それを活かすには、どのように見せたいか、どのように感じてほしいかといったデザイン意図と、紙・製本工程の可能性と特性をどう結びつけるかがポイントになります。この辺りは実績とノウハウの蓄積が大きな違いとして出てきます。
印刷工程での紙選び →「用紙の種類と特徴(コート紙・マット紙・上質紙など)」




