オフセット印刷とデジタル化

1985年アメリカで、オフセット印刷の世界を大きく変える技術が登場します。
コンピュータ上で仕上がりイメージをリアルタイムで表示しながら、文字や写真を一括して処理して作業できるDTP(Desk Top Publishing)です。以降印刷データのデジタル化が加速していきます。
日本では日本語環境という独自性から普及が遅れていましたが、ソフトウェアや書体の充実に伴い1990年代半ばくらいからは本格的な普及期に移っていきました。

出版印刷の世界ではページ物の制作に画期的な効率化をもたらし、商業印刷の世界でも仕上がりイメージがダイレクトにわかるメリットは大きかったといえるでしょう。
現在では、デザイナーさんがDTPで仕上がりイメージを確認しながら作業をするのは当たり前となっています。
その後、デジタルデータをダイレクトにオフセット印刷用の版に出力するCTPシステムが実用化されます。印刷ポジを介さないため、理論的には精度もコストもメリットがあるものですが、当初はスピードも精度も耐久性も通常刷版に劣っていました。しかし技術的な改良が進み、2000年くらいからはカラー印刷分野にも本格的に導入が進み、今やオフセット印刷刷版といえばCTP出力が普通となっています。また同時に1990年代後半から、本格的にインターネットの普及が進み、回線やサーバーも高速化・大容量化していきます。

デジタルカメラの高性能化も進み、当初は印刷品質には達しないといわれていたものが、現在ではデジカメでの撮影が当たり前となっています。データのデジタル化と回線の高速化はネットを介しての印刷データのやり取りを可能としました。印刷会社の工場間のデータ転送はもちろん、ネット通販印刷といったビジネスモデルも登場しました。

工場間のデータ転送が実現され、完全データ入稿が増えてくると、都心に工場がある必要はないと考える印刷会社が多くなってきます。
綿密なやり取りがなくともデータなりの品質でいいのであれば、土地にしても、倉庫にしても、環境にしても、コストを抑えるためには郊外のほうが有利なのです。

誠晃印刷のある東京都新宿区(神楽坂界隈)も例外ではなく、印刷工場は郊外に移転もしくは廃業し、跡地はマンションに変わっていきました。現在実現されている印刷の高度なデジタル化は、結果的に人の介在を排することにもつながっています。
ヒューマンエラーの要素は削減されますが、逆に人の目を介す部分が減っているために、以前は気づくことのできたデータ作成時のミスもそのまま製品化されるようになりました。

何より、通販印刷に代表される効率化を追い求めた印刷会社は単なる出力デバイスとなり、デザインを活かしたより良い色調を追い求めるような職人的な要素は失われてしまいました。今現在の印刷物は、コストを追い求め、人が手間をかけることが少なくなった結果、全体としてはレベルが低下している時代といえるでしょう。

しかし、一方でしっかりとした印刷物に対するニーズは残っていますので、今後はますます印刷物の細分化が進んでいくのではないでしょうか。誠晃印刷では、しっかりとした品質の印刷物をしっかりとこなせる技術とノウハウを今後も受け継いでいきたいと考えています。

ではなぜ高品質印刷物は必要か →「今なぜ印刷物に高品質を求めるのか?」

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